【書評】『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』

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DropboxやAirbnb(エアビーアンドビー)といった急成長ベンチャーを輩出し、今や世界中のスタートアップが注目すると言っても過言では無い「Y Combinator (Yコンビネーター)」。

少なくとも日本においては、これまでYコンビネーターの詳細が明らかになる事はほとんど無かったと思いますが、

 【書評】『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』 【書評】『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』
本書『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール 【書評】『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』』ではその全貌がまるで映画のようにドキュメンタリー形式で描かれており、なぜシリコンバレーでは多くのスタートアップが生まれ、そして次々と成功していくのか、そのヒントを知ることができる非常に有益な書籍でした。


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Yコンビネーターとは?

2005年、Paul Graham氏が立ち上げた「Yコンビネーター」は、シード段階のスタートアップに小額の出資をするのが特徴のベンチャーキャピタルであり、ハッカーたちが競って参加を目指すスタートアップ養成プログラムを運営しています。

Yコンビネーターへの参加は合格率約3パーセントという狭き門。選ばれし優秀なプログラマー達が3ヵ月間の「修行」を経て、多くの投資家の前でプレゼンをする事によって追加投資を勝ち取るという形式です。

 【書評】『Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール』(参照元:http://wired.jp/2012/02/03/interview-ginzamarkets/)

Yコンビネーター出身のスタートアップはこれまで数多くのエグジットに成功しており、
Y Combinator出身で成功した会社トップ10
Yコンビネーター出身という事実が生まれたばかりの企業に大きなブランド価値をもたらしているとさえ言える状況なのでしょう。

本書では、著者が3ヵ月間のプログラムに潜入取材することで得られたリアルな状況が描かれていますが、起業において非常に重要なポイントをたくさん学ぶことができました。ここからは、本書から得た幾つかの重要な示唆をまとめたいと思います。

スケールできるビジネスでなければスタートアップではない

Yコンビネーターのパートナーであるポール・グレアムは、スタートアップの定義を下記のように説いています。

スタートアップの本質は単に新しい会社だという点にはない。非常に急速に成長する新しいビジネスでなければならない。スケールするビジネスでなければいけないんだ。

つまり、例えばウェブサイトのデザインについて助言するコンサルティング会社を創立するというのはスモール・ビジネスの開業であって、スタートアップの起業では無いということ。一方で、ウェブサイトの構築を自動化するようなソフトウェア開発をする会社を作るのであれば、それはスタートアップになり得ると。ただしこの場合でも、このソフトウェアを使ってくれる顧客を1社ずつ営業して回らなければいけないようであれば、「急速に成長可能」というスタートアップの重要な定義からは外れてしまう、ということでした。

人が欲しがるものを作れ

Yコンビネーターの最大のモットーは「人が欲しがるものを作れ」だそうです。
世界中から選抜された超優秀な起業家が集まってくるYコンビネーターにおいても、半数以上は失敗するとのこと。面接時に発表したアイディアに対して自信を失い、軌道修正を余儀なくされるスタートアップも多く存在するようです。

人が欲しがるものを作るには、外に出て顧客の声を聞くこと、そして目の前に転がっていながら誰も気づかなかった問題を探すことが重要だと書かれています。例えば本書の事例を引用すると、

Yコンビネーターの応募者は、誰もが「料理のレシピサイトを始めようか?それともクレジットカード支払いシステムの改良に取り組もうか?」と思案した挙句、レシピサイトを選んだというわけではあるまい。クレジットカード支払いシステムに改良が必要なことはわかっていても、その困難さを無意識に感じ取って見ないようにしていたのだろう。(中略)これでは誰でもレシピサイトのほうを選ぶ。そんな困難に取り組む勇気のあるスタートアップはこれまで出て来なかった。

新しいクレジットカード支払いシステムを実現するには、無数の法律や規制の問題、銀行との契約、詐欺や不正の防御、システム侵入者との戦いなど面倒なことが山積みですが、そこで思考停止せず不の解消に取り組むことが出来るスタートアップこそ成功すると説いています。

新しいアイデアを生み出す3カ条

グレアムが考える、アイディアを生み出すための3カ条が非常に面白いです。

1.創業者自身が使いたいサービスであること
2.創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること
3.巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと


グレアムは、事業アイディアに悩む創業者に対して下記のようなヒントを投げかけていました。

「誰かが自分のためにスタートアップを作ってくれるとしたらどんなのがいいか自問してみる。次に、自分以外の誰かにとってどんな困った問題がありうるか考えてみるのもよい」

「仕事をしていて、ここのところを誰かうまく解決してくれたらなあと思うようなことはなかったか?」

「Googleの創業者たちは検索分野に強かった。そういう意味で、きみたちが強いのはどんな分野だ?」


5つの資質 – スタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知

ポール・グレアムが言うところによると、スタートアップの創業者になるのに最適な時期は20代の半ば、だそうです。
創業者が学生だと、起業して失敗しても学生に戻ればいいだけなので真剣味が足らない、かといって30代になれば子供や家のローンなど色々な重荷がかかってくる。25歳だと学校に戻る安全な未知は閉ざされており、スタミナ、貧乏、根無し草性(シリコンバレーへの移動をいとわない)、同僚(学生時代の仲間が共同創業者候補になる)、無知(苦難を深く認識しないで進める)といった起業に必要な利点を備えている、ということでした。

「スタートアップにどんな苦難が待ち構えているか知っていたら誰も創業者にはならないだろう」という記述が非常に興味深いです(笑)

金鉱を掘るのではなくツルハシを売れ

「かつてカリフォルニアのゴールドラッシュで儲けたのは金鉱堀りの人々ではなく、彼らにツルハシを売った商人たちだった」
これは良く引用されるエピソードですね、金鉱堀りにジーンズを売ったリーバイスが一番儲けたと。

ソーシャルゲームが流行する日本では、そのゲームに使用するイラストを安価で提供するスタートアップが出てきたりしています。

本書では、ソフトウェア・ディベロッパーのほとんどがデータを安全確実に補完するノウハウを持っていない中で、データベースの管理プラットフォームを提供することにより、ディベロッパーに対してコードを書くことに集中できる環境を与えるという戦略のスタートアップが多額の投資を受けるケースを紹介していました。

感想〜国内スタートアップの状況と比較して〜

本書を読んで気になるのは、国内でも果たしてこうした環境が構築できるのか、ということ。

日本でもインキュベイトファンドが運営する「インキュベイトキャンプ」など、Yコンビネーターを倣ったインキュベーションプログラムが提供されていますが、やはりシリコンバレーで発生している経済規模とは比較すらできない状況だと思います。

スタートアップを支援するベンチャーキャピタルが増えている印象はありますが、そもそもスタートアップを志す優秀な人が少ない(こぞって大企業へ進む)、シリコンバレーのような市場が形成されていないためエグジットが難しい、といった課題はすぐに解消できるものでは無いのでしょう。

加えて技術者自身がスタートアップを志すケース自体少ないことと、国内のインキュベーターには、ポール・グレアムのようなプログラマー出身者がいないという点も事実として存在します。

文化自体が違うので、何でもかんでもアメリカに倣えという形は難しいのでしょうね。
国内独自のスタートアップ環境が発展することを期待したいです。

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4 comments

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