【書評】私、社長ではなくなりました。 – ワイキューブとの7435日

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先日このブログでご紹介した板倉雄一郎氏の著書「社長復活」と「社長失格」ですが、
経営者が語る「失敗のケーススタディ」から学べる事は非常に多くあると思います。

という訳で今回は、元ワイキューブ社長安田さんの「私、社長ではなくなりました。」をご紹介。



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「私、社長ではなくなりました。」

中小企業の新卒採用コンサルティングで一時、業界を席巻したワイキューブ。

しかし2011年3月に経営難を理由として民事再生法の適用を申請。経営破綻したワイキューブ社の社長であった安田佳生氏の著書「私、社長ではなくなりました。」は、なぜワイキューブが失敗したかという点が詳細に綴られた一冊です。



著者はリクルートを経て1990年、25歳でワイキューブを立ち上げます。

ワイキューブ社は中小企業向けに新卒採用をコンサルティングする事業が主力で、ピーク時の年商は46億円とのこと。また、社内にオシャレなバーを作ったり、非常にユニークな会社として知られていました。

大企業を含めた就職人気ランキングでは17位にランクインした事もあるそうで、実際に私が就職活動をしていた05年頃は、就職先として人気の企業の一つでした。

ではなぜ、ワイキューブ社が経営破綻に陥ったのか。本書で記載されている内容から失敗の原因を探ってみたいと思います。


「優秀な人材さえ集まれば、自然に売上は伸びるし、会社も大きくなるだろうと思っていた」

採用支援を行っている会社だからこそ、優秀な学生を獲得する事にとことんこだわったようです。

特に、超大手企業が上位に名を連ねる「就職人気ランキング」にベンチャーが入れば注目されて学生も集まるとの考えから、ランキングの1位を本気で狙っていたとの事。
多い年では採用に累計3億円以上をかけ、実際に文理総合で32位文系17位まで上がったそうです。会社説明会への動員も多い年では1万5000人に。

 【書評】私、社長ではなくなりました。   ワイキューブとの7435日

(参照元:『採用ブランド調査2004』株式会社リクルート)

ただ、数を集めたからといって良い人が採れたかといえば、必ずしもそうではなかったようです。

そもそも当時のワイキューブは社員数50〜60人。実力以上に学生を集めた結果、社員の営業を止めて採用に総動員させても人手不足という状態になり、せっかく集めた学生と深く接触できずに他社に取られてしまったり、採用期間は本業がおろそかになり本末転倒になってしまったとの事です。

それに、そもそも人気企業ランキングで大手より上位になったとしても、大手より良い人材が獲得できたという訳でも無かったようです。


「日本でいちばん高い給料を払えば、日本でいちばん優秀な人が来るのではないかと思った」
「3年間で社員の平均年収を1000万円にする」
「入社2年目以降の社員であれば、業績にかかわらず新幹線のグリーン車に乗ることができる」

社員の平均年齢が26歳、平均年俸が400万円だったところを3年間で1000万円に引き上げようとしたとは驚きです。実際に平均750万円まで上げたようです。

また、社員のモチベーションを上げるため、オフィスの1階フロアにカフェスペースやワインセラーを設けたり、社員をオシャレにするための自社ブランド「Y-style」を立ち上げたり。常識に捉われない発送で積極的に話題作りをし、優秀な社員を集めるのと同時に企業ブランディングに注力したそうです。

 【書評】私、社長ではなくなりました。   ワイキューブとの7435日

(社内のバー)

 【書評】私、社長ではなくなりました。   ワイキューブとの7435日

自社ブランド「Y-style」

一方で、実はそれらの資金はすべて銀行からの借入金でした。先行投資先としていちばん効果があるのが「人」という考えからだったようですが、借金の総額は40億円にのぼるものとなっていきます。

ただ、「給料を高くすれば社員のパフォーマンスもそれに見合うようになるだろう」という著者の目論みは、残念ながら外れます。期待していたほどパフォーマンスが上がらなかったばかりか、高い給料をもらえるようになった社員はそれが当たり前になってしまった。年齢や実力以上にもらっている社員が「もっと欲しい」と言ってきたり、逆に守りに入ってしまった社員もいたそうです。


マーケットはすでに飽和状態だったのだ。
当時の市場規模は、新卒採用がピークだったときで四百億円くらいだった。それに対して、ワイキューブの売上は四十数億円。つまり10%のシェアをとっていたことになる。大手の存在を考えると、私たちがもっていた商材でとれる市場はすでにとってしまっていたのだ。

市場の拡大が期待していたほど広がらなかったため、投資した金額ほどに売上が伸びなかったとの事。新卒採用を行う中小企業の数は全体の総数から考えると多くはなかったため、伸びしろは十分あると見込んで人やブランドに投資したものの、「やった方がいいのは分かるが、やらない」という中小企業の方が圧倒的に多かったそうで、結局積極的に新卒採用を行う中小企業は増えずに頭打ちとなってしまいます。



しかし、そもそも私は利益を残すことに興味がなかった。むしろ、売上が伸びれば利益はおのずとついてくるものだと思っていた。
だが、売上を伸ばすことと利益を伸ばすことは、まったく別のことである。まったく別の能力が必要である。

業績が伸び続けなくても、確実に利益を出していれば、会社はつぶれなかったのかもしれない。
このようなことは、社長が100人いれば、99人は普通に実践しているだろう。けれども、私にはそれができなかった。
私は他人がすでにやっていることをやることには、まったく興味がなかった。


売上が下がり始めた結果、銀行への返済が滞るようになり、高いことに慣れてしまっていた社員の給料を下げざるを得なくなります。その結果、働き盛りの主力社員が辞めてしまい、さらに売上が下がっていく負のスパイラルに。

リーマンショックによる影響も重なり経営が傾くと、さらに雪崩を打って社員が辞めてしまい、結局借金だけが残ってしまった。これが経営破綻の内情のようです。



利益を出すということを考えていなかったという著者の経営方針は、それがゆえに従来の発想とは違ったユニークな施策を生み出す結果となっていたかと思います。しかし、銀行からの借り入れから社員の給料をアップしたのは完全な失敗だったと著者も認めているように、様々な施策や先行投資を行うにあたっての「リスクとリターンの管理」が経営において基本かつ重要な要素である事を本書から改めて学べます。

要は、計画と実績との乖離を日々管理する事でリスクをヘッジしたり、その計画の進捗に応じて迅速な打ち手を実行していく、という基本を外してはいけないという事だと感じました。


そしてこのワイキューブのケース、
実は「社長失格」で描かれている失敗の原因と本質的にはまったく一緒なんです。

簡単にまとめると、以下の項目ですね。

・ファイナンス(借り入れ)計画の重要性
・仲間、従業員との関係性構築
・計画との乖離、市場の読み違い

こうして失敗のケーススタディを見てみると、共通点が多い事に気づきます。
もちろんビジネスは机上の空論ではありませんが、知っておくに越した事はありませんよね。

社長失格をまだ読まれていない方は、非常に面白いのでぜひ。

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