【書評】「5年後、メディアは稼げるか」を読んで思った、メディアが広告で稼ぐ難しさと新たな可能性

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 【書評】「5年後、メディアは稼げるか」を読んで思った、メディアが広告で稼ぐ難しさと新たな可能性 【書評】「5年後、メディアは稼げるか」を読んで思った、メディアが広告で稼ぐ難しさと新たな可能性
東洋経済オンライン編集長の佐々木氏が、自身の経験や海外事例などを元に今後のメディア業界の行く末を記した本書。東洋経済オンラインを、編集長就任後わずか4ヶ月でビジネス誌系サイトでNo.1に導いたとの事で、その方法論に興味を持って購入しましたが、特にwebメディアのマネタイズについて非常に良くまとまっており、大変参考になりました。

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メディアの稼ぎ方


本書はタイトルの通り、メディアのマネタイズ方法がメインのテーマです。
webメディアの稼ぎ方について、著者は以下の8つの方法があると記述しています。

メディアの8つの稼ぎ方

  1. 広告
  2. 有料課金
  3. イベント
  4. ゲーム
  5. 物販
  6. データ販売
  7. 教育
  8. マーケティング支援


このうち、現在各メディアが収益の柱としているのが「広告」でしょう。
ただし、web広告で大きく儲けることは非常に難しいと、著者は言っています。

なぜwebメディアは儲からないのか


私自身、楽天で運営するポータルサイトの広告企画・販売や、アドネットワーク事業者として新聞社などのwebメディア数十社とパートナー提携を行ってきた経験がありますが、著者の言う通り、メディア単体で自社の広告枠を定価で販売するのは極めて困難と言わざるを得ません。

なぜか。
現在、webメディアが販売する広告のメインはバナー広告になりますが、googleのリスティング広告と比較し、クライアントが設定する目標(CPAなど)に対して明らかに効果が見合わないからです。
バナー広告の効果を高める一番の方法は、ユーザーを増やす事。それが出来れば、フリークエンシー(一人あたりの広告表示回数)を適切にコントロールしたり、自社のデータを利用してユーザーに最適な広告が表示されるようにターゲティングしたりできます。
但し、広告配信対象ユーザーや表示回数を絞れば絞るほど、効果は上がっても収益化できる広告在庫自体が減ってしまうため、数千万PV程度のwebメディアでは、いくらユーザーを増やしたとしても結局それらの施策を実現するのに必要なコストと効果が見合わなくなります。

そのため、売れ残った在庫をアドネットワークに提供する事に。アドネットワーク業者が提供するアドテクノロジーや仕組みについては、以前書いた流れでざっくり理解する!アドテクノロジー概要まとめ(ディスプレイ広告)を参照頂ければと思いますが、数多くのwebメディアから在庫やデータを仕入れ、それらを格安単価で広告主に販売します。
本書でも記載されていますが、アドネットワーク経由での販売における収益は、自社で定価販売した場合の1/10程度、PVあたり0.1円〜0.3円にしかなりません。

これでは、新聞社がいくら紙面の広告販売が落ち込んでいると言えど、web化によってそれを補うにはあまりにも安すぎる。アドテクの進化によって、criteoなど従来よりも高いパフォーマンスを実現できるバナー広告配信の仕組みが誕生してきてはいますが、マス広告で稼いできた額とは比較になりません。それに、どれだけメディアが「媒体のブランド力や信頼」といった定性的な価値を訴求しても、webではクリック率やCPAなどの定量的な指標が丸裸にされてしまいます。アドネットワークに在庫を提供した場合には、その広告枠は各社の在庫と組み合わせた「単なる部品」に成り下がり、ブランド価値もクソも無い状況になってしまいます。

よってメディアがバナー広告で大きく稼ぐというのは、もはや現実的では無いと言えるでしょう。

著者は、メディアがweb広告でマネタイズするためには、クッキーでは拾えない、自社でしか得られない「会員登録によるデータ」を獲得し、第三者のデータと組み合わせることが大事だと主張しています。

ただし個人的には、それも大きく稼ぐには厳しいだろうなと感じています。
理由としては、メディアの記事を読むためにわざわざ会員登録して様々な個人情報を登録するのが煩わしいと感じるユーザーが多いと考えられるため、登録者を増やす事自体の難易度が高いこと。
それに、上記で述べた通り、例え登録者を増やす事が出来たとしても、データによるターゲティング配信によって効果が出るだけの「対象者を絞る」必要があるということ。例えばクライアントの希望配信対象者が「東京の港区に住んでいて経済系の記事を月に10本以上閲覧しており、過去にメディア主催のセミナーへ参加したことがある30代の男性」だとして、これに合致する人が1,000人いたとします。一人に対して3回広告を配信する設定を行ったとすると、この場合合計で3,000PV(imp)の配信となります。impあたりの収益が0.1円と本書にありましたが、例えその10倍の価値で売れたとしても、impあたり10円。つまり3千円です。これでは正直、厳しいでしょう。

ブランドコンテンツというマネタイズ


もう一つ著者が主張しているのが、「広告を面白くする」というアイディア。テクノロジーだけに頼らず、記事広告としてメディアが有する人材の企画力を最大限に発揮するやり方です。

その具体的な事例として本書で紹介されているのが、「ブランドコンテンツ」(別名ネイティブ広告、スポンサー広告)というもの。本書の説明をそのまま引用させていただくと、

企業がつくったコンテンツ(オウンドメディア)、もしくは、企業と媒体のコラボでつくったコンテンツを、ウェブメディア上に掲載するサービスです。メディアが企業に「場所貸し」と「コンテンツ・コンサルティング」を行うビジネスともいえます。
一般的な記事広告との違いは、記事の内容がコンテンツ仕立てであり、会社の商品やサービスなどの宣伝がほとんど含まれない点です

ということでした。

米国では、このブランドコンテンツが15億ドル強の市場であり、2012年には4割弱の伸びを示しているそう。この成長の背景にあるのは間違い無く広告主企業のオウンドメディア戦略、コンテンツマーケティング戦略による流れでしょう。従来型広告の効果が下がってきている中で、企業が自社発のメディア及びコンテンツに強化しており、コンテンツを通したユーザーとの接点をダイレクトに結べている事例も幾つか出てきているようです。

一方で、広告主がオウンドメディアとして集客、コンテンツ制作を注力することは、すなわちこれまでの広告主企業の体制や従業員のスキルセットを見直さなければいけないということを示唆しているとも言えます。よほどの大企業では無い限り、自社でジャーナリストやライター、編集者などを新たに何人も雇い入れることは難しいと思います。
そこで、既にユーザーが集まっているメディア側とブランドコンテンツという形で協業することにより、広告主側はコンテンツ制作リソースやノウハウを得られるというメリットがあるのではと考えます。媒体側としても、広告主のオウンドメディア化に伴う新しい関係性の構築及びマネタイズ機会を得る非常に良いチャンスでは無いでしょうか。ユーザーとしても、明らかに広告主企業の宣伝を目的としているのが見え見えのタイアップ広告より、内容自体が面白いコンテンツを好むはずですので、うまく機能すれば非常に良いスキームになる可能性があると思いました。

コンテンツマーケティングについて一言


国内ではまだまだオウンドメディア、コンテンツマーケティングに注力する企業が多くないと思いますが、webマーケティングの世界では日本は「米国の3年遅れ」と言われてきましたので、近い将来盛り上がる市場になると個人的には確信していたりします。

理由は、リスティングやバナーも含めて広告効果が下がっていること、Googleのアップデートの影響で良質なコンテンツ作成がSEOに重要なポイントとなったことは、米国でも日本でも同じだからです。

ということで、非常に面白い本でした。上記は本書の内容の一部を取り上げましたが、他にも米国と日本におけるメディア環境の比較や、新聞が「しぶとい」理由、雑誌がかなり厳しい状況になっている理由など、メディア関係者にとっては非常に重要かつ興味深い内容が多く含まれていましたので、ぜひ読んでみてください。

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2 comments

  1. Pingback: 「企業のオウンドメディア活用について考える」サイボウズ式勉強会レポート | CyberTimes [シバタイムス]

  2. Pingback: ネット時代ののメディアの教科書 「5年後メディアは稼げるか MONETIZE OR DIE」 | Kobayashi Blog

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